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企画展「マテウシュ・コウェク さまよう街」
2025.08.14
恵那市移住定住アンバサダーの西村知穂です。
先日、恵那市大井町にある中山道広重美術館で、企画展「マテウシュ・コウェク さまよう街」を見てきました。
中山道広重美術館は、恵那駅から徒歩3分のところにある美術館で、恵那市在住の収集家、故・田中春雄氏から寄贈された歌川広重の浮世絵版画など約1500点を収蔵。毎月、企画展という形で展示しています。
そんな浮世絵を専門としている美術館で、今回はポーランドの現代作家マテウシュ・コウェク氏の作品が展示されていることが気になって、覗いてきました。
美術には疎い私。
中山道広重美術館の中垣さんにご案内いただきました。
中山道広重美術館は、昨年、ポーランド共和国クラクフ市にある「日本美術技術博物館マンガ」という、ポーランドで唯一日本文化を紹介する国立博物館と、友好協力協定を締結。
これまでは、人的な交流をしていましたが、コウェク氏の作品が歌川広重の風景画に強く影響を受けていることから、日本美術技術博物館マンガとの初の共同企画展として、この展覧会が実現したそうです。
ポーランドの現代作家が、歌川広重に影響されてどんな作品を生み出しているのか、気になりますよね~
展示室には、クラクフ市と東京の風景をテーマに、時代や場所が交錯する独特の世界観で描かれた作品30点が展示されていました。
こちらの「浅草タイガー」という作品は東京をテーマにしていますが、どこか懐かしさを覚える風景の中にいるランドセルを背負った浅草タイガーが謎で、一瞬にして目が釘付けになってしまいました。
ビビットな色合いで遊び心がありますよね。
見ていると旅をしているような気持ちになれるのは、広重も街道絵で使っている視点を下げて描く手法によるものだそうです。
木版ではなくデジタル印刷なので、水彩画のようなみずみずしい色目でありながら、くっきりとした輪郭なのも面白いですよね~
ちなみに、コウェク氏は、スマホを持たずに自分の目で見て印象に残った風景を描いているとお聞きして、ビックリ。
カメラに収めず、こんなに鮮明に日本らしさが描かれていて、日本へのリスペクトも感じられました。
ちなみに、縦構図にモチーフを見切れるくらい手前にもってきているのは、広重が「名所江戸百景」のシリーズで多用している、モチーフで遠近感を出す代表的な構図を取り入れているとのこと。
作品の至るところに広重の影響を強く受けていて、驚きました。
展示されていた作品の中で、まるで自分を見ているように感じた作品がこちら! 「新宿ブロークンハート」
中垣さんと、土曜夜10時くらいの居酒屋でこんな感じになりますよねと(笑)共感しました。哀愁を感じますよね~
昔から教科書などで馴染みのある広重らしさを感じるからこそ、どこか懐かしさを感じるのかもしれません。
雨の表現も、なんだか日本らしいですよね~
広重の作品と同様、叙情性のある作品に見入ってしまいました。
自然の繊細さをしっかり描いている作品がある一方で、ペットショップの風景を描いたカラフルで可愛いこんな作品もありました。
この作品を見ながら、中垣さんと「犬派?猫派?」談義で大盛り上がり。
こんなふうに作品を見ながら会話が弾むって楽しいですね!
こちらは、なんだか渋谷の喧騒が伝わってくるようですよね~
そして、30点の出品のうち、この展覧会に合わせた描き下ろしの作品が2点。そのうちの1つがこちらの「ウサギとカメ」です。
なんと、日本語を勉強されているコウェク氏の手書きのサインが入っていました。
ここに描かれているカメを散歩させている女性は、コウェク氏のパートナーの方だそうですが、よく見るとミラーには、カメではなくコウェク氏が描かれていました。紐で繋がれていることと、手を繋いでいることをリンクさせ、お互い歩くペースが違い、歩み方や考え方も違うけれど気付きがあるという、隠されたメッセージにも感動しました。
ここからは、クラクフ市の風景をテーマにした作品。鯉のぼりが描かれていますが、ポーランドにある日本美術技術博物館マンガの前では、5月になると鯉のぼりが上げられるそうです。
鯉のぼりの向こうにバベル城が見えているのが新鮮ですよね。クラクフ市に行ってみたくなりました。
こちらは、中垣さんが個人的にお好きだという作品「ピウスツキ橋」。大正期に浮世絵を新たな形で復興することを目指しつくり出された「新版画」を感じさせる色が、まさにセンチメンタル!
中垣さんは、こういったコウェク氏の色彩感覚がお好きだそうです。
クラクフ市の雨の風景を描いた作品も、どこか日本っぽさを感じるから不思議ですよね。
ポーランドだけど日本っぽい、日本の風景だけど日本にはない色合いで描かれていて、コウェク氏曰く、そのことで、観る人に固定概念を開放してほしいそうです。
今回、中山道広重美術館では、コウェク氏の作品をじっくり見てもらおうと、あえて額に入れずに展示しています。そのため、反射せず、紙の質感まで感じられます。
コウェク氏の作品を通して、広重の作品の魅力にも触れることができますよ~
企画展は8月24日(日)まで開催していますので、ぜひ、お楽しみください。
また、館内には、浮世絵の重ね摺り体験コーナーが人気の「浮世絵ナビルーム」や情報ギャラリーなどもありますので、夏休みにお出掛けになってはいかがでしょうか?